『就活って何だ 人事部長から学生へ』森 健

『就活って何だ』森 健
9月17日発売

本書の取材は2010年度採用が終わったばかりの時期に行われた。数千人、数万人を、数十人、数百人に絞り込む作業をしてきた直後だ。

まだ熱が冷めやらぬ時期に、あえて企業秘密ともいうべき話を聞かせていただいた。「それは通常お答えしていないんです」というリアクションもしばしばだったが、手を替え品を替え、彼らの本音に迫った。(「はじめに」より)

東海旅客鉄道

巣山芳樹(取締役人事部長)

ある社員は、最終面接でこう言われ、入社を決意しました。
「うちはまっすぐ前を向いて歩ける会社だよ。後ろめたさを感じず、自分たちのやっていることは正しいんだと誰に対しても言える」

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全日本空輸

志岐隆史(執行役員人事部長)

地方出身の朴訥とした学生には、面接に慣れておらず緊張して黙ってしまうタイプもいます。でも彼らにも確固とした個性がある。
何よりも、きれいに話ができることが判断基準ではない。

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三井物産

雑賀大介(執行役員人事総務部長)

”地頭”がよくて、優秀という理由だけでは採用しません。
あの人は信頼できる、あの人なら逃げない、失敗を人のせいにしない、できないことはできないと言うーーそんな価値観が採用の決め手になる。

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資生堂

高重三雄(執行役員人事部長)

想定質問に想定通り答えすぎてしまうのはマイナスです。 演技ではなく、突発的な心の叫びををぶつけてほしい。
最後の最後まで諦めないでください。最後の一分で逆転することもある。

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東京海上日動火災保険

木村岩雄(人事企画部長)

学生さんの過去の行動事実を掘り下げ、ブレを無くすよう努めています。各段階ごとに違う観点から質問していくと、整合性、信憑性の問題が出てくる。マニュアル通りの準備で対応できなくなると、オロオロする学生さんもいます。

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三菱東京UFJ銀行

島本武彦(執行役員人事部長)

内々定まで4回面談する学生もいれば、8回という学生もいます。本音ベースで話すことにより、お互いが本当に納得して決めることが必要。企業から見れば「採用」、学生からは「就職」。対等な立場のお見合いだと思う。

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サントリーホールディングス

宇野重雄(人事部部長)

つねに僕は「なぜ」を重ねる形で尋ねるようにしています。
決して圧迫面接ということではなく、そのことで、学生さん自身も「なぜ自分はそう思ったのか」を考えるし、動機の深いところまで見えてくる。

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明治製菓

樋口昌弘(人事室長)

彼は説明会で最後の一人になるまで質問を重ねてくる学生でした。言葉は拙く、器用ではないが、芯の強さ、何かをやり遂げる可能性を感じました。最初は苦労するかもしれないが、いずれはよき管理職になる。見込みは当たりました。

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武田薬品工業

石井陽二(人事部長)

今のタケダは、本当に欲しいと思う人材を獲得するためなら労はいといません。日本での採用を強化する一方で、グローバルに活躍できる人も貪欲に求めていく。ただし、江戸時代以来の「コツコツ真面目に」というタケダイズムは不変です。

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日立製作所

飯塚毅(人財戦略室室長)

学生時代に何に熱心だったかという点について、どうして、どんなところにどう工夫したかと、どんどん深掘りすることで、学生がいかに本気だったかが浮かびあがる。実体験に基づく話というのは、どこまで掘っても具体的なものです。

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NTTドコモ

田中隆(取締役執行役員人事部長)

入室して挨拶をした、その瞬間の印象。ハキハキしているか、人の目をちゃんと見ているか。明るくて、元気があるか。
最初の印象でだいたい7割くらいはどういう人かわかるつもりです。

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バンダイ

本田耕一(取締役管理政策担当)

自分で言うのもなんですが、確かに個性的な人を採っていると思います。学生時代、秋葉原でメイド美容室を経営していたという社員もいます。クリエイティビティがあり、ビジネスをやろうという考えがはっきりしていた。

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フジテレビ

河野雄一(執行役員人事局長)

うちに入るタイプは、人当たりがよく、底抜けに明るいといった感じで、基本的に柔らかくて素直。人柄で言うと、友だちが多そうだとか、ユニークなことをいろいろしてそうだとか、そういう人間です。

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ベネッセコーポレーション

豊田京子(人財部長)

NPOなど、学生時代の活動を聞く際、ひとつ重視している点があります。それはボランティアではなく、ビジネスの発想に立てるかということ。教育とビジネスのバランス。そこをどう考えていくかという視点です。

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電通

蛇草真人(人事局長)

少なくとも就活本ばかり読んでいるような人は採りたくない。
電通を志望するなら、むしろ人間としての深みや幅を増すような体験をしてほしい。電通が求める原点は「人間力」ですし、それあっての電通なのだと思います。

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著者プロフィール

森 健

森 健 (もり けん)

1968年東京都生まれ。早稲田大学法学部卒。月刊『文藝春秋』、『週刊文春』をはじめ各誌で経済記事や人物ルポを中心に執筆。著書に『人体改造の世紀』、『インターネットは「僕ら」を幸せにしたか?』、『グーグル・アマゾン化する社会』他。



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