少し早い、俺たちだけの聖夜。 そのオルガンは、特別な音で鳴った。 18才の少年が奏でる、感動の音楽青春小説。
天野は弾きながら、さっと振り返った。 彼女の視線がうろついて俺を捜して、 目が合うと笑顔が咲いた。 そう、花が咲くように笑う子だ。 春や夏の日差しのように笑う子だ。 俺はちょっと身体が震えた。 このオルガンを弾く喜びを、 天野が俺にそのまま伝えてくれたから。
定価:1450円(税込)
判型:四六判
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幼い自分を捨てた美しい母。聖職者の矩を外さない父——。ものごころつく前から、教会のオルガンに親しんだ鳴海一哉は、幼い頃に離婚してドイツに渡ったオルガニストの母への複雑な思いと、常に正しい父親への反発で屈折した日々を送っていた。 聖書に噛みつき、ロックにこころ奪われ、難解なメシアンのオルガン曲と格闘しながら、18才の夏が過ぎ、そして聖夜のコンサートリハーサル——。
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