文春新書
なぜリスクをとるリーダーが出ないのか
なぜ日本にはカエサルのようなリーダーが現れないのか――二千年に及ぶローマ帝国、そして中世ルネサンス期の栄華と衰退を知り尽くした著者だから語れる、危機の時代を生きるためのヒント。月刊「文藝春秋」の看板連載がついに新書化。
人間ならば誰にでも、現実のすべてが見えるわけではない。多くの人は、見たいと思う現実しか見ていない。(本文 P12)
危機の時代は、指導者が頻繁に変わる。首をすげ代えれば、危機も打開できるかと、人々は夢見るのであろうか。だがこれは、夢であって現実ではない。(本文P40)
人間にも年齢があるのに似て、組織にも、そして国家にもある。ただし、この場合の「年齢」は、肉体上というより、精神の年齢を指すのはもちろんである。(本文P48)
想像力も筋肉の力に似て、訓練を重ねていないと劣化してしまう。だからであろうか、学校秀才には想像力に欠ける人が少なくない。(本文P97)
自己反省は、絶対に一人で成されねばならない。決断を下すのも孤独だが、反省もまた孤独な行為なのである。(本文P109)
私があなたに求めることはただ一つ、刀折れ矢尽き、満身創痍になるまで責務を果しつづけ、政治家としての命を終えて下さることなのです。(本文P195)
1937年7月、東京生まれ。
学習院大学文学部哲学科卒業後、イタリアに遊学。68年から執筆活動を開始。70年、『チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷』で毎日出版文化賞を受賞。この年よりイタリアに在住。81年、『海の都の物語』でサントリー学芸賞。82年、菊池寛賞。88年、『わが友マキアヴェッリ』で女流文学賞。99年、司馬遼太郎賞。2002年にはイタリア政府より国家功労勲章を授与される。07年、文化功労者に。『ローマ人の物語』は06年に全15巻が完結。『ルネサンスの女たち』『ローマ人への20の質問』『ローマ亡き後の地中海世界』など著書多数。